佳き日に
自分は今まで何にそこまで惑わされていたのか。
なんだか桔梗は馬鹿らしくなってきた。
全てを失って、これから向かうべき場所。
進むべき道。
桔梗は目を閉じ思う。
それはとても簡単なことだった。
今までやりたいけど出来なかったこと、これからは全部やって、精一杯楽しんで。
努力して、幸せになって。
胸はれる自分になれたら、兄さんに伝えよう。
あなたが背中を押してくれたから。
会えなくなっても、あなたが僕の記憶の中にいてくれたから、ここまで来れましたって。
そうして、人間の過ちも笑い飛ばしてしまえるくらい、大きくなろう。
目の前には、何も知らないはずなのに全てを知っているような、そんな琥珀の笑う顔があった。
“あなたがいたからここまでこれたんです。”