佳き日に





「けっこう面白いぞ。見るか?」


レジに花言葉図鑑をドシッと開いて置く。

雪はそこまで見たいとは思わなかったが、一応興味あるフリをした。



「アイリス、ガーベラ、スイセン。バラは色によって花言葉が違う。」


「へぇ。」


パラパラとページが捲られる度、色とりどりの花々の絵が現れる。
雪は花の種類の多さに驚きながらそれを見つめる。


「あ。」


見たことある花を見つけ、思わずそこで声をあげた。



「ダイヤモンドリリー。気に入ったのか。」

ふむ、ふむ、と老人が頷き、シワだらけの顔をさらにしわくちゃにして微笑む。


「前向きな花言葉だ。」


淡いピンク色の花がそこに描かれている。


最後に、琥珀から貰った花だ。
いくつか押し花にしてまだ持っている。
そうか、あの花はダイヤモンドリリーというのか。

そう思って、雪は目線を下へずらしていく。

花言葉。



『また会う日を楽しみに』



そう、書かれていた。

どくり、と心が震えた気がした。





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