佳き日に




知っていたのだろうか。
彼女はこの花言葉を。

きっと、知っていたのだろうな、と思う。

雪が琥珀の記憶を消すつもりでいたことも、分かっていたのかもしれない。
それでも、何も知らないフリをして。

伝わるかも分からない花束に、別れの言葉を託して。


また会いたいと、思ってくれたのだろうか。
信じていいのだろうか。



「物事は成り行きだからな。」


老人は、全て見通しているような目を雪に向けた。


「何が起こるかなんて、最後まで分からないものだ。」


その言葉には、重みがあった。

うっかり、閏が言っていた奇跡が起こるかも、なんて考えてしまうぐらいには。


『また会う日を楽しみに』


一週間遅れで届いた琥珀の言葉。


じゃあ、俺も、楽しみにしてる。



心の中で、雪はそう返した。




復讐は、もう果たした気がした。









“では、また会う日まで”









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