ハルカカナタへ
目障り
水門彼方〜Kanata Minato〜

カーテンの隙間から除く晴天と煩い蝉の声に目を細め両手を天に突き上げ伸びをする。
乱暴に布団をはぐりベットから降りよろよろとふらつく足元で洗面所へ向かうが何かが違う。
無意識に眉根が寄る。
俺の知らない男物の香水の匂いがするがもちろん俺のではない。
廊下に充満するほどの強い匂いは双子の姉の遥の部屋まで続いている。

「チッ」

朝からイライラする。
わざと音を立てながら階段を駆け下り玄関を見る。
やっぱり。
遥のハイヒールの横に見覚えのないスニーカーが脱ぎ捨ててある。
盛大に溜息を吐いて髪を掻き毟りながらその場に座り込む。

「彼方大丈夫?」

座り込んだまま声がした方へ顔を上げると遥がいつのまにか立っていて
その後ろでは気まずそうに体格の良い男が立っている。
その姿を見てまた不機嫌になる。

「この人高校の先輩なの」

俺の不機嫌そうな顔を見て遥は慌てて関係性を説明するがそんな言葉で納得するほど残念ながら素直にできていない。
露骨に嫌な顔をして男を見ると玄関にはさっきまでの香水の匂いではなく重い沈黙が充満する。

「水門の弟さん?そっくりですね」

そりゃそうだろう。双子なんだからしかも一卵性の。似てるって言われるのは好きではない。このそっくりな容姿のせいで色々なことを我慢してきたんだから。
そんな嫌みが喉まで上がったがあえてなにも言わずその場を去った。

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