男子校のお姫様
慧が教室から遠ざかったころ、突然霊気を感じなくなった。
それを不思議に思ったのはその一瞬だけで、とても強い冷気を感じる。
「っ!」
それと同時に突如教室が暗くなった。
窓やドアはすべて壁に変わり、完全な閉鎖空間に・・・。
蛍光灯はちかちかと点滅を繰り返す。
嫌な空気の中、クラスのみんなの動揺した声が聞こえてくる。
「どうしよう・・・。これじゃ慧も入ってこれないよ・・・」
あたしがそう呟いたと同時に、教室前方から声がした。
「くくく・・・やはり人間など虫けらと同等。弱い生き物だ」
その声に、視線を移すと暗闇ではっきりとは見えないけど黒い衣装に身を包んだ長身の仮面男が立っていた。
「先ほどまでは特別霊力の強い者がいたようだが、あっさり俺の罠にかかってくれたようだ」
あたしはその言葉で、あれはおとりだったと気がつく。
あたしはもしもの時のため、常に霊力を抑えている。
だから、今のあたしの霊力は慧とは比べものにならないくらい弱いんだ。
「この中にもうまそうな匂いが漂っているな」
その言葉にあたしは息をのんだ。
誰かが狙われている・・・。
あたしは細心の注意を払って男を見据えた。