男子校のお姫様

「すごくいい。2人とも経験者?」

光君が首を振る中、あたしはあいまいな返事を返す。

「佳音も未経験じゃない?あんなのは経験のうちに入らないよ」

あんなのとは、小学生のころ琉生兄や慧と出たCMのこと。

「素人!?そうは思えないすばらしい演技だったぞ!?」

その言葉にあたしは照れたように俯いた。


その後の授業もすべて終えたあたしは、部室棟をめざす。

「失礼します」

演劇部の部室につくと、すでにほとんどの生徒が揃っている。

「あ、佳音ちゃん。早速練習できるかな?」

「はい」

あたしはバックから台本を取り出すと、指定された位置に立った。

「ここからね」

その言葉にあたしは頷くと、深呼吸をする。

「君は何者なんだい?」

「私は津田瑞希と申します」

「なぜあそこにいた?」

きつい口調で聞いてくる副長役。

「私は江戸から来たんです。それで町を歩いていたら不逞浪士に絡まれて・・・」

「それで逃げたらあそこに迷い込んだってこと?」

あたしは泣きそうな顔で頷く。

さすが演劇部。本格的な演技・・・引き込まれそう。

そう思いながら夢中で演技を続けると、ストップの合図が出た。

< 217 / 259 >

この作品をシェア

pagetop