男子校のお姫様
「すごくいい。2人とも経験者?」
光君が首を振る中、あたしはあいまいな返事を返す。
「佳音も未経験じゃない?あんなのは経験のうちに入らないよ」
あんなのとは、小学生のころ琉生兄や慧と出たCMのこと。
「素人!?そうは思えないすばらしい演技だったぞ!?」
その言葉にあたしは照れたように俯いた。
その後の授業もすべて終えたあたしは、部室棟をめざす。
「失礼します」
演劇部の部室につくと、すでにほとんどの生徒が揃っている。
「あ、佳音ちゃん。早速練習できるかな?」
「はい」
あたしはバックから台本を取り出すと、指定された位置に立った。
「ここからね」
その言葉にあたしは頷くと、深呼吸をする。
「君は何者なんだい?」
「私は津田瑞希と申します」
「なぜあそこにいた?」
きつい口調で聞いてくる副長役。
「私は江戸から来たんです。それで町を歩いていたら不逞浪士に絡まれて・・・」
「それで逃げたらあそこに迷い込んだってこと?」
あたしは泣きそうな顔で頷く。
さすが演劇部。本格的な演技・・・引き込まれそう。
そう思いながら夢中で演技を続けると、ストップの合図が出た。