男子校のお姫様
「いやぁ・・・実にすばらしい演技だ。才能があるんだな」
「いえ。そんな・・・」
「今のはセリフだけだったけど、今度は自由に動いてみてくれるかな?」
「はい」
あたしはそう返事をすると、所定の位置についた。
「続きからよろしく」
あたしは小さく頷くと、そっと目を閉じる。
場面は池田屋事件。死者をも出すほど激しい戦い。
その場に駆け付けた主人公はさぞかし動揺しただろうな・・・。
あたしはスッと息を吸い込むと、ゆっくりと目を開ける。
「永倉さん!手が!」
永倉さん役に駆け寄ると優しく手を握り、心配したような表情をする。
「ん?あぁホントだ。こんくらい唾でもつけときゃ治るって。それより平助が額を斬られたようなんだ。行ってやってくれねぇか?」
「はい!」
あたしは藤堂さん役に駆け寄った。
「っ・・・藤堂さん!」
「お、前・・・なん、で来た・・・」
「その話は後です。喋っちゃだめです!今応急処置しますから!」
あたしはそういうと応急処置をしているしぐさをする。
その後しばらく劇を続けたところで再び声が掛けられた。
「ホントすばらしい・・・。思わず引き込まれるような演技だ・・・」
あたしは照れながらその言葉を受け止めていた。