イジワル社長と秘密の結婚
メモリを握りしめ、「失礼します」とその場を立ち去ろうとしたとき、突然腕を掴まれた。

「蒼真さん?」

怪訝な顔で見上げると、蒼真さんは真剣な目で私を引き寄せた。


「咲希……」


私の名前を呼ぶと、唇にキスをした。蒼真さんが私にキスをする時は、いつも力強くてクラクラしてくる。

「ん……」

だから、鍵を閉めろと言ったんだ……。最初から、こうするつもりで?

しばらくキスをして唇が離れると、私は息が切れていた。

「今夜は、帰ってくるだろう? 課長のことは、もう気にしてないから」

蒼真さんはそう言って、また唇を塞ぐ。静かな社長室には、私の漏れる吐息と、蒼真さんの荒い息遣いが聞こえるだけだった。




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