イジワル社長と秘密の結婚
フロアに着くと、課長が慣れた手つきで内線電話を鳴らす。


背丈以上あるパーテーションの陰から見えるオフィス内は、ざわついた感じだった。

「課長、なんだか忙しそうですね?」


こんなときに来て、大丈夫なの?

「ここは、いつもこんな感じだから気にしなくていい」


課長がそっと囁くように言ったと同時に、真由さんが小走りでやって来た。


「こんにちは、迫田さんに伊原さん。お待たせしました」

「いえ、とんでもないです」

社員カードを首からぶら下げ、スーツを品良く着こなしている。

「こちらへどうぞ」

真由さんはニコリと愛想のいい笑顔を浮かべると、私たちを奥の応接室へと案内してくれた。




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