イジワル社長と秘密の結婚
そう。それは本当に、突然のお見合いのはじまりで……。

「お父さん、一体誰が来るの？」


「まあ、焦らず待ちなさい。すぐに分かるから」

今、私たちがいる場所は、某有名ホテルのレストランだ。三十二階にあるこの場所からは、街の景色が良く見える。会社のビルも、遠くに見えていた。

「今日は、天気がいいなぁ」

「お父さん、のんきなことを言わないで。私は帰りたいんだけど」

「今さら、そんなわけにはいかないだろう。もう少しで先方が来られるから、待ちなさい」

たしなめるように言われ、納得できないながらも、それ以上の反論は出来なかった。

さすが、高級ホテルのフレンチレストランだけあり、落ち着いた雰囲気で、とても大きな声で会話が出来る雰囲気じゃない。

ましてや口喧嘩なんてしていたら、店から追い出されるかもしれない。さすがに、それは恥ずかしいからしないけど、本音は、父に抗議したい気持ちでいっぱいだ。


だって、突然、“結婚して欲しい人がいる”だもん。こっちの返事を聞くまでもなく、“まずは先方と会ってくれ”だなんて、無茶苦茶過ぎる……。




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