イジワル社長と秘密の結婚
「おはよう、伊原さん」

「あ、課長。おはようございます……」

いつもどおり出勤すると、迫田課長が挨拶をしてくれた。昨夜のことがあって、どこか気まずい。

課長は、自分のデスクに戻るがてら、私に小さく耳打ちをした。

「昨日はありがとう。それから、少し強引でごめん」

私が返事をする間もなく、課長は自席へ着いた。昨夜のお誘いは、課長にとって本気だったのか。

それとも酔った勢いだったのか、そこは分からないまま。だけど、どうしてだろう。

今は、それが気にならない。それよりも、蒼真さんは今夜は早く帰れるのか、それが気になっていた。


「こんにちは。調子はどうですか?」

昼過ぎ、アポをしていた自動車販売店に出向いた。営業の仕事といっても、私が直接車を売るわけじゃない。

ディーラーに出向いて、新車の売れ行きや現場の問題点などを見つけるのが仕事だ。

今日は、普段から出入りしている店舗に行き、店長と会った。
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