イジワル社長と秘密の結婚
差し出したA四用紙を手に取った蒼真さんは、真剣な顔でそれを眺めている。さすが、仕事をしているときの顔は違うな……。

それにしても、久しぶりに会って、緊張しているのは私だけみたい。彼が出張の間、連絡があったのは、最初の夜景だけ。

忙しいからだろうと、私からも連絡は控えていた。その間、蒼真さんはどうしてるかなと、気にしてたんだけど……。

気にする方がおかしいよね。蒼真さんは私のことなんて、気にかけてなかったはず。

それなのに、私はどうしてこんなにーー。

「なかなかいい感じじゃないか。ただ、修正を加えるなら……」

蒼真さんの声に、我に返る。仕事に集中しなきゃ。彼のアドバイスを聞き、次は修正したものを提出することで決まった。

「ありがとうございました。これ、みんなで考えて作ったんです。部長たちに報告しておきます」

「ああ、部長と課長には、俺からもフィードバックしておくよ」

それだけ会話をし、挨拶をすると副社長室を出ようとする。名残惜しさを感じていると、背後から蒼真さんに抱きしめられた。
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