イジワル社長と秘密の結婚
すると、蒼真さんが優しく私の頬に触れた。

「俺さ、咲希が相手なら、こういう無理やりな結婚もありかなと思った」

「え?」

「きみのことは、まったく知らなかったわけじゃない。部長たちから、一課の伊原さんを聞いていたし、顔だって知っていたから」

「私のことを、ご存知だったんですか⁉︎」

知らなかった……。私は社長である蒼真さんを知っていたけど、彼もわたしを知っていたなんて。

「ああ。それでこんな関係になって、咲希が浮ついた女性なら、即離婚するつもりだったけど……」

「浮ついてたかもしれません……。だって、課長が憧れでしたし」

そう言うと、蒼真さんはクスッと笑った。

「それは仕方ない。だけど、もう過去形なんだ? 憧れてたって」

「あっ……」

指摘されて、初めて気がつく。私ってば、無意識にそう言っていた。
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