イジワル社長と秘密の結婚
「課長……?」

なんで、こんなことをしてくるんだろう。不安と緊張で、顔がこわばる。ひとけのないオフィスって、こんなに怖かったっけ?

「伊原さん……じゃない。伊原。もう、お前をただの部下として見るのは、終わりにしたい」

「え……?」

課長はなにを言っているの? 戸惑いを見せたほんの一瞬の隙に、課長の唇が私の唇に重なった。

……何が、私の身の上に起こったの?

反射的に体を押し返すと、課長は真剣な目で私を見た。


「伊原、好きだ」

「課長……」

まさか、課長から告白されるなんて、まるで信じられない。あんなに、憧れていた課長からの告白ーー。

でも、私はこの瞬間にも蒼真さんの顔が浮かんでいた。

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