イジワル社長と秘密の結婚
課長の想いを受け止められない。キスをされたことだって、嬉しいどころか、蒼真さんに顔向けできない、そう思っていた。

「すみません、課長。私は、お付き合いできません」

きちんと断ることが、誠実な態度。そう思ったけれど、課長は気にする様子がない。

「もちろん、今すぐ返事をしろとは言わない。驚いたよな。強引だったし。ただ、チャンスくらいはほしいんだ」

「チャンス……?」

訝しげに見る私に、課長は真剣に言った。

「そう。俺も希望を持ちたい。伊原に好きな男がいても、そいつから奪い取りたい」

蒼真さんと結婚した初日なら、喜んで受け入れたかもしれない。離婚ができるから。

でも、今は私は彼と夫婦としてやっていきたい。そう思っているから、課長の気持ちを受け止めることはできないーー。絶対に。



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