イジワル社長と秘密の結婚
「ごめんなさい、課長」

それだけ言うと、私は走ってオフィスを出た。背後から、「伊原!」と課長の呼ぶ声が聞こえたけど、振り向くことなく走っていった。

―その夜。


蒼真さんが帰ってきたのは、深夜を過ぎてからだった。

課長のことを話した方がいいのか、答えが出なかった私は、先にベッドへ入って、寝たふりをした。

深夜に話すことではないかもしれないし、私自身も頭を整理してから話したい。

だから寝たふりをしてみたけれど、蒼真さんが事実を知ってどんな反応をするか、それを見るのも怖い気がして話せなかった。




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