あの日のように。
「来ちゃった」
「来ちゃったって・・・」
あたしは水やりの時間をあっけなく邪魔されてしまったことを
ちょっと残念に思ってしまっていた。


あなたと初めて話す時間だったのに
大切にできなかった。
大切だと思えなかった。
ごめんね・・・


「花、好きなの?」
雄太があたしに聞いてきた。
「うん、大好き」
あたしが水やりを終えると同時に、雄太が近くのベンチを指さしたから、二人で座った。
すると雄太がゆっくりと話し出した。
「実は俺も、一つだけ好きな花があるんだよね」
「何ていう花なの?」
素直に気になった。
「ポインセチアっていうんだけど」
ポインセチアといえば、見た目が真っ赤で、奥になにか秘めているような花だ。
まるで雄太のような。
「花言葉、教えてあげよっか?」
あたしはヒマさえあれば、いつも家でいろんな花の花言葉を調べていた。
「教えて?」
「えっとね、情熱的な恋」
「そっか・・・」
雄太は髪をかき上げながら、ぼーっと空を見ていた。
すると、雄太が急にあたしの方を向いた。
「俺にもそんな恋、できるかな」
「えっ。・・・できるよ、絶対」
あまりにも真剣な目で、それにどことなく悲しそうな目をしていたから、とっさに答えてしまった。
「どっからそんな自信湧くんだよ」
雄太はフッと笑って、また空を見ていた。

あたしたちは、諒介君の中学校時代とかの話で盛り上がったりしてから、その場を後にした。

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