愛で散れる夜の純情
第一章
退屈だ、とつい友人の前で零してしまったのが全ての始まりだった。
感情を上塗りして仮の表情で取り繕うのが誰よりも上手だったのに。
自負していたことをあまりにもあっけなく壊してしまったことが何だか悔しい。
「えっ桜ちゃん今の話退屈だった?ごめんね!」
「あぁ、いえ。違うんです。気分を害したならごめんなさい」
慌てふためく学友に苦笑して片手を挙げて見せた。
確か彼が喋っていたのは誰其とデートした時の話。
正直言うと半分以上聞いていなかった。
人の家に突然押しかけてまで話すほどの内容でもなかったと思ったからだ。
屋敷の縁側に腰掛け、暖かい春の陽気に包まれていたせいかそんな気持ちが口から滑り落ちたみたいだ。
「桜ちゃん、つまらなかったらいつでも言ってよ?」
「充分つまってますから安心してください」
にこりと笑って空になった彼の湯呑みにお茶を継ぎ足す。
ただ、と私は付け足した。
ほんの戯れで本当のことを織り交ぜてみたいと悪戯心にも似た欲が出てきてしまう。
「ふとこのセカイが退屈だな、と思ったんですよ」
そう言った瞬間の彼の表情は滑稽だった。