愛で散れる夜の純情
「ね、桜ちゃんしれっとした顔してるけどさ、あんなあからさまに言われて腹立たないの」
「別に。ああいう輩は無いものとして認識していますから」
「冷た!つか余裕だなー」
いいえ。
うるさいのが嫌いなので耳に入れないようにしているだけですよ。
溜息を付きながら鞄の中身を机に仕舞っていく。
「ん?なんか落ちてきた」
参考書を取り出した時だった。
ひらり、何かが一緒に鞄から机へと落ちていく。
それは小さな桜の花びらだった。
「いつの間に紛れ込んだのでしょうか…」
「へぇ!まだ綺麗なピンク色だね。かわいいー」
歌うように言った風雅が何かに気づいたように顔をあげる。
「そういえば桜ちゃん、最近の『退屈』加減はどうですか?」
「…あぁ。お蔭さまで面白い玩具を手に入れかけたのですが、蒔いた種がまだ目を出さないようで」
「は?なにさ、植物でも育ててるの?」
「さぁ、どうでしょう」
ふふ、と笑うと風雅は心底不思議そうな顔で首を傾げた。
辛くなったら逃げ込む場所として使うよう言っておいたが、近い内に来ないのならばもう二度とこないのだろう。
「植物で言うならそろそろ散り時ですね…」
「はぁ???」
諦め半分で、私は再び珍客が訪れてくるのを待っていた。