愛で散れる夜の純情
彼女は『天音』と名乗った。
なるほど、よく似合う。
そんなことを漠然と思った。
桜の木の下で見つけた時は、正直、堕天使に見えたからだ。
地に堕ちた天使。
愛らしい顔をして血まみれだった彼女にぴったりだ。
「天音。そうですか…」
「名字は言わねぇ」
「構いませんよ」
「…フン」
それから夜が更けるまでお互い好きなことをした。
彼女は部屋の隅で丸まって寝始めたし、私は少し離れた場所に座って本を読んだりした。
同じ部屋にいるだけ。
なのに時々空気に混じって天音の痛みが伝わってくるようだった。
相変わらず彼女の拳は赤黒く腫れたまま。
――寂しい女だ。
まぁ私も人のことは言えないが。