愛で散れる夜の純情
まるで三歳の子供が難解な理数分解を答えろと言われたかのような――つまりは、訳も分からずきょとんとしている。
「毎日同じようなことばかりで飽きた、というのが妥当ですかね」
そこまで言ってようやく彼は閃いたようだった。
「あぁ。まぁ、朝起きて学校行って…って同じことの繰り返しだよね。でも、飽きるかなぁ?」
「少なくとも貴女の話を聞いている今は楽しいですよ。ふと思っただけですので気にしないで下さい」
「ふーん?」
いい線を行っていたがおしい。
理解には至らなかったようだ。
私のこの空腹にも似た焦燥感を。
自分でもただぼんやりと思っただけだから仕方ないのかもしれない。
「おや、お茶菓子が切れてしまったみたいですね。ちょっと待っていて下さい」
「あっいいよ桜ちゃ――」
止めようとする声に振り向かず廊下を進んで行く。
「…変な桜ちゃん」
そう。
私は変だったのだ。
少なくとも感傷に心を曝されているような心地だったこの日は。