愛で散れる夜の純情
元の縁側に戻ると、待たせていた学友――秋野風雅(あきの ふうが)が携帯のディスプレイと睨めっこをしていた。
彼のふわふわの金髪を見てさっき見つけた少女を思い出す。
「あっ桜ちゃん!」
顔を上げた風雅は眉毛をハの字にしていた。
情けない表情に何かあったのだと悟る。
「いいですよ。どうせ急用ができたのでしょう?」
「ごめんね!せっかくケーキとか用意してくれたのに!!」
「気にしないでください。察するに、さっき話していた彼女でしょう?行ってあげてください」
「ありがとう桜ちゃん!!この埋め合わせは今度絶対するから!!!」
顔の前で両手を合わせて謝る彼に早く行くよう催促する。
彼が話の途中でいなくなるのは珍しいことではなかった。
相手の彼女がとんだ束縛女なのだ。
いつ何時でも呼び付ける我が儘女のどこがいいのか、私には皆目見当もつかなかったが、本人が本気らしいので何も言わず送り出す。
「あっそうだ桜ちゃん!」
あわただしく廊下を走っていた風雅が離れた場所で声を荒げた。
「次に退屈するようなことがあったら俺を呼びなよ!すぐ駆けつけて笑わせてやるからさ!
」
ニッと笑う彼に手を振って応えて見せる。
小さく頷くと彼は満足そうに去って行った。
いくら慌ただしくしようが、ああいうちょっとした気配りができるから、あの男の傍は楽なのだ。