愛で散れる夜の純情
全てが終わった時には陽も傾いていた。
辺りが黄昏に染まる頃、彼女は目を覚ました。
「…っ」
痛みに顔をしかめながら辺りを見回している。
どれだけ見ても、この部屋には彼女が寝ている布団と掛け軸くらいしか置いていない。
「目が覚めたようですね」
「…アンタ、」
「私は桜。桜、紅夜(さくら こうや)」
「…すげぇ名前…」
「よく言われます」
置きたがる彼女に手を差し出して助ける。
繋がれた手から彼女の熱が伝わった。
「体中に傷と打撲がありました。しばらくはそのせいで発熱して苦しいでしょうね」
「随分楽しそうに言うんだな」
「おや?そんな風に聴こえましたか」
腹を探るような視線を投げつけられる。
この少女は人間に対する警戒心が随分強いようだ。
まぁ私が相手だからかもしれないが。