愛で散れる夜の純情
「何があったとか、聞かないんだな」
「別に。興味ないので」
「ふーん」
それに大方察しはつく。
乱闘だろう。
彼女の拳は赤く腫れていて、明らかに沢山の人間を殴ってきた手だった。
「あたしの服は?」
「付着した血の量が多かったので捨てようかとも思いましたが、とっておきました」
洗うのは面倒だったしそこまでしてやる義理もないので、そのまま風呂場に放り込んであるだけだが。
「帰る。服があるとこまで案内して」
「あの服を?」
「悪い?」
「別に。おかしな人ですね」
童顔な顔からは想像できない強気な言葉がポンポン出てくるのが愉快だった。
普通ならせっかく助けてやったのにと憤慨する所なのだろうが、何もかもに退屈していた私には新鮮だ。
「何にやにやしてんだよ、気持ち悪ぃな。お前こそおかしな奴だ」
「えぇ。そうですね。否定はしませんよ」
真顔で応える。
彼女は苦虫を噛み潰したような表情をした。
そしてフラつく体で無理やり立ちあがろうと試みる。