先生とわたし。


1-Aについた

黒板に書かれた自分の席の位置を確認し
教室内の生徒が徐々に徐々にそこへ座っていく


想像できたと思うが、
蒼井美咲は、苗字が「あ行」で、しかも次の文字が「おい」なため
当然、1番前の席だ


(最悪・・・)


隣の男子も、後ろの席の男子も
全然知らない子。

おまけに隣の男子は、美咲からみて左斜め後ろの席の人と、
後ろの席の人は、美咲から見て後ろの後ろの子との
おしゃべりに夢中だ

どうやら、美咲が口をはさむ暇はないらしい

内気な美咲には
初めての人に声をかけるということは
夏によく見かける、黒くてテカテカしてるアレを
退治するのに等しいぐらいだ


1人でボケーとしていると
扉がゆっくりと開いた
どうやら、担任の先生が来たみたいだ


美咲は、ハっとなった

担任が、自分の名前を
ゆっくり書き進めていく
チョークをおいて、ゆっくりと皆の方を向いた

「1-Aの担任になりました。西東讓です。あ、にし・ひがしって書いて西東って言います。1年間、よろしくお願いしまーす」

と言いながら
西東という男性は、ペコリという効果音が似合うお辞儀をした



さっき、美咲がぶつかった相手だ

間近で、その西東って人を見てる美咲は
なんだかドキドキする

茶色い目の他に
小さいくて丸い顔、ホワンとした顔つきだけど
薄く細長い目からは生真面目さが見られる
だがさっきの自己紹介の仕方から見て、生真面目さの中に天然を兼ね備えている・・・

と、美咲は咄嗟に、そんなことまで推測した


クラスのいわゆる今時系の女子が
西東に他にも自己紹介を、と申し出をした

西東はしばらく考えこみ
何が知りたい?と問うと、

血液型ー!誕生日ー!年齢ー!好きな食べ物ー!趣味はー?
なんの教科の先生なんですかー?ズバリ彼女はー?
と、主に女子からの質問が多発した

どうやら、西東は黒板の前に立っただけで
女子からの人気を得てしまったようだ

「おいおい・・・そんなに一気に言われてもわかんないって・・・」

コホン、と
咳払いをひとつした西東

「西東讓、24歳B型、国語教師。好きな食べ物は甘いもの、ちなみに嫌いっつーか、苦手な食べ物は辛いもの。趣味は・・・読書、とかかな?んで、彼女はいません」

スラスラと
女子達が言った質問全て+αに、丁寧に回答をした

「キャー!甘いものが好きって、なんか可愛いー!!」
「読書が趣味なんだって!クールだよねー」
「彼女いないって本当!? 嘘っ!あんなカッコいいのにー・・・」

とにかく女子達がキャーキャー騒ぎ出した

西東は、それに
さきほどと同じく無表情で見ていたが

「うるさいよー」

の言葉と同時に
自分の爪の黒板にこすり始めた


キリリリリリリリリ・・・

いや~な音が
教室内に響きわたる

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