『短編』紙婚式
*
「菜々、僕を見て」
亮(りょう)の声にびくんとする。
恥ずかしくて視線を向けられない。
戸惑いながら目を泳がせていると、
「僕を見て」
と、甘い声で急かしてくる。
ドキドキしながらちらりと見上げると、亮とばっちり目が合った。
とっさに目を逸らせてしまう。
そんなわたしを見て、亮はくすりと笑い、
「かわいい」
と言って、わたしにそっと口づけた。
わたしを見下ろす、褐色の瞳。
垂れ下がるその髪が、妙に色っぽい。
ベッドの中の亮は、普段の亮と違って。
魅惑的で、情熱的で、そして少しいじわるで。
わたしの体は火照るばかりで、まともに目なんて開けていられない。
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