『短編』紙婚式



「菜々、僕を見て」



亮(りょう)の声にびくんとする。



恥ずかしくて視線を向けられない。



戸惑いながら目を泳がせていると、



「僕を見て」



と、甘い声で急かしてくる。



ドキドキしながらちらりと見上げると、亮とばっちり目が合った。



とっさに目を逸らせてしまう。



そんなわたしを見て、亮はくすりと笑い、



「かわいい」



と言って、わたしにそっと口づけた。



わたしを見下ろす、褐色の瞳。



垂れ下がるその髪が、妙に色っぽい。



ベッドの中の亮は、普段の亮と違って。



魅惑的で、情熱的で、そして少しいじわるで。



わたしの体は火照るばかりで、まともに目なんて開けていられない。


< 1 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop