『短編』紙婚式
その日の夜。
複雑な気持ちのまま、それでも今日を楽しもうと、わたしはお洒落をして待ち合わせ場所まで行った。
仕事を終えたサラリーマンたちや、学校帰りの学生たちが行き交う駅前。
そんな雑踏の中から、小走りでこちらに向かってくる亮が見えた。
軽く手を上げると、亮はにっこりと笑った。
そういえば、待ち合わせって久しぶりだ。
スーツ姿の亮と外で会うのも久しぶり。
家にいる時とは違う、ぴしりと決まっている外の顔の亮に少しどきどきした。
「待った?」
「ううん。わたしも今来たところ」
「じゃ、行こうか」
「うん」