『短編』紙婚式
2人並んで、夜の街を歩く。
結婚してから、なんだか照れくさくて手を繋がなくなった。
だけど、今日は。
自分からそっと彼の手を握った。
どこにもいってほしくない。
ずっとそばにいてほしい。
亮は黙ったまま、そっと握り返してくれた。
大通りから少し入ったところにそのお店はあった。
隠れ家のようなこじんまりとした小さなフランス料理店。
店先には黒板に今日のおすすめメニューが掲げてあり、鉢植えの植物が並んでいる。
「こんなところにこんなかわいいお店があったんだ」
「いい感じのお店でしょ。さあ、どうぞ」
そう言って亮は、店の扉を開けてくれた。
「ありがとう」
さりげないこの心遣いがじんわりと心に染みた。