『短編』紙婚式
「いいよ」
亮の合図で目を開けると、今まで閉じられていた真正面の窓のカーテンが開けられいて、その庭先に、季節外れの桜が満開に咲き誇っていた。
「うわ…」
思わず口に手を当て、言葉を失くしてしまう。
その桜は、すべて、紙だった。
「まさか、これ……」
「お店の人に頼み込んでね。夜な夜な作ってたんだ」
「え、じゃあ、最近帰りが遅かったのって……」
「あ、うん。思いのほか時間がかかっちゃってね」
そう言って亮は、照れくさそうに笑った。