『短編』紙婚式
「だって、帰りがずっと遅かったし、それに……」
「それに?」
「この前、たまたま見かけちゃったんだもん……梨花さんと腕を組んで歩いているところ」
顔を覆ったまま、鼻声で告白すると。
「ああ!あれ、菜々見てたの!?違う違う」
そう言って、わたしを優しく抱きしめた。
「堤さんに頼まれたんだ」
「梨花さんに?」
「そう。堤さん、お父さんがお見合いしろって押しかけてきたらしくてね。頼むから恋人のふりをしてくれって、頼まれたんだよ。腕を組んで歩いてたのは、お父さんに見せつけるためだったんだ」
それを聞いて、体中の力が抜けた。
ふらっと倒れそうになったわたしを、亮は抱きとめてくれた。