さくらんぼなあたしと王子様
あたし今日1人で帰るの…?

末っ子のせいか、生まれながらの気の弱さ、そして極度の

ネガティブ思考のせいなのかあたしは1人がすっごく苦手!

保育園、小学校、中学校では1人で帰ったことが一度もない。

世羅ちゃんがいなくても中学校では誰かと帰ったり…。

誘うことができなかった日は

お姉ちゃんの誰か1人
むかえにきてくれて、

一緒に帰っていた。

今日は初日でおわるのがはやいから誰も来てくれないよね…。

友達なんていないし…。

黒板側の窓をしめてカーテンのボタンをとめ、後ろ側の方をやろうと思い、向くと。

パチン。

カーテンをとめるボタンの音がした。

「こっち、もう終わったよ?」

首をかしげて優しく微笑んでいるのは、

「桜羅く…ん…。」

なんでっ… って、女の子は? さっきまで囲まれていなかった?     

教室、いつの間にかあたしと桜羅くんのふたりきりだ。
        
ごちゃごちゃ、いろんなおどろきをかくせないあたし。

「もう覚えてくれたんだ、名前。」

キュッウッ。

桜羅くんがすっごくうれしそうな顔をしたのだ。

この笑顔をみせるから、きっと女の子達に囲まれるんだ。

いや、いや、笑顔じゃなくてふつうに、かっこ…い、い。

「有重さん顔真っ赤。」

「えっ…。」

手をほっぺにやるとほんとに熱く、熱を帯びている。

彼はクスッ、と笑って言った。

「有重さん、10分くらいずっとかたまっていたよ。」

かたまって…? 10分もっ!! 

でも、桜羅くん女の子に囲まれていたのになんでみんな帰って、彼は1人でいるんだろう…?

不思議に思っていると…。
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