オオカミ先輩の猫かぶり
「これは?良くない?紗和に似合いそうだよ。」



「あっ可愛い。」



先輩が勧めてくれたのは小花のモチーフのヘアピン。



前髪邪魔だなぁっていう私の何気ない呟きを覚えていてくれていた先輩は、私をヘアアクセサリーが沢山置いてあるお店に連れて来てくれた。



自分でも忘れてたことなのに。



「あっ。」



「ん?」



「この時計可愛い。」



ヘアアクセの隣のコーナーに置いてある腕時計のひとつにシンプルだけど、オシャレで可愛いものがあった。



「これいいね。あ、男性用もあるよ。」



「本当だ。そっちも良いですね。」



隣同士に並ぶ男性用と女性用の色違いの時計は2つ揃うとなおさら可愛い。



「買っちゃう?お揃いで。」



「え?でも、12000円もしますよ?」



「そっか…。それは痛いね。」



残念そうに言う先輩。



12000円なんて、学生が気軽に出せる金額じゃない。



「あっアイス食べたいです。」



気を取り直して、明るく言う。



「いいよ。行こうか。」



先輩も答えるようにふっと笑った。



「じゃあこれ買ってきますね?」



「それ、貸して。」



先輩は私の手から、さっきのヘアピンをひょいと取り上げる。



結局ヘアピンは先輩が買ってくれた。



お会計の時、店員さんにお似合いですねーなんて言われてふたりして顔を真っ赤にしちゃって。



それから、顔を見合わせて笑った。
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