女王様は上機嫌【GL】
「ぐ、偶然だねえ」
「偶然――じゃねえだろ」
慌てて演技をしたわたしに、千鶴が呆れたように息を吐く。
「‥‥バレてた?」
「バレバレ。尾行も演技も下手だな、あんた」
うう‥‥。
どうせわたしは不器用ですよ。
「えっと‥‥神崎くんは?」
「パンフ買いに行った」
そう千鶴が答えたとき、背後から神崎の声がした。
「――あれ、え、藤木さん?」
振り返ると、神崎が目を見開いて立っていた。
「偶然、同じ映画見てたんだと」
「あはは。うん、ぐーぜんぐーぜん!」
千鶴がさらりと嘘を吐いたから、ちょっと冷や汗をかくわたし。
「――そうなんだ」
神崎は軽く眉間にシワを作った。
こっそりつけてましたゴメンナサイ。
一応、頭の中で謝っておく。