女王様は上機嫌【GL】
手を洗い終えた千鶴が、顔を上げる。
「‥‥あんたのせい、だよ」
「え?」
意味がわからなくて、聞き直した。
すると、千鶴が振り返って。
「わたしが学校行かなかったこと、うちの親父にチクっただろ」
千鶴は唇を笑わせる。
責めるような台詞とは不釣り合いな表情だ。
「それで怒った親父にガラスのコップ投げつけられてさ。この有り様だよ」
「か、顔に?!」
千鶴の父親を思い出す。
怒って物を投げるような人には見えなかった‥‥けど。
「まあ、こんぐらいいつものことだけど」
いつものこと。
その言葉にゾッとして、わたしは口を開く。
「‥‥千鶴のことが心配だから、怒るんじゃない?」
きっとそうだ。
千鶴が心配ばかりかけるから。
「―――シンパイ?」
わたしの言葉を聞いた千鶴は、嘲るように笑った。