女王様は上機嫌【GL】
 

鏡の中の自分と目が合う。

酷い顔だ。

表情が強ばり、顔から色が抜けている。


このままでは戻れない。


わたしは深呼吸をした。



顔色を取り戻してからトイレを出ると。

千鶴の姿がなくなっていた。


「千鶴は?」

「なんだか、用事が出来たって言って帰ったけど」

「そっか‥‥」

神崎に落胆の色は見えなかった。

たぶん、そう、わたしのほうが落ち込んでいる。


神崎がカップの中身をスプーンでかき混ぜる。

「藤木さんは、宝田さんのことどう思う?」

「―――」

なぜだかドキリとして、返答に詰まったわたし。

「どうして藤木さんと宝田さんの仲が良いのか、俺にはわからないんだ」

神崎は探るような瞳でわたしを見た。

でも、どう答えればいいのかわからない。


わたしと千鶴の仲が良い、とは思えないからだ。

少なくとも、今は。

 
< 112 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop