女王様は上機嫌【GL】
喫茶店を出て。
駅まで歩いて。
電車に乗って帰ってきた。
その間、ずっと気持ちが悪かった。
胸元になにかが詰まってて、軽い吐き気が止まらない感じ。
「ただいま」
玄関を開けて家の中に声をかけると、
「おかえりー」
お母さんの声が返ってくる。
途端に、ほっとした。
なんでもない、平凡で平和な、いつも通りの日常に戻った気がした。
そうだ。
わたしは平和がいい。
退屈でも安心な平和がいい。
だから―――。
だから、わたしは千鶴の体の痣を見たくなかったんだろうか。
千鶴を嫌う神崎に、その理由を聞こうとしなかったんだろうか。
自分の目や耳に入らなければ、ないものとして過ごせるから?
そうすれば、少なくとも自分自身の平和は保たれるから?
嫌悪感で頭が痛くなる。
「わけわかんない‥‥」
額を手のひらで押さえながら、布団に潜り込んだ。
もう、今日は早く寝てしまおう。
眠ってしまえば、なにも考えずにすむから。