女王様は上機嫌【GL】
ユカの表情につられるように、先生の頬の筋肉にわずかに力がこもる。
「‥‥おう、なんだ?」
ユカが身を屈める。
これから内緒話でもはじめるみたいに。
「えっと――変な噂があるんですよ。宝田さんのことで」
心臓が止まりそうになった。
噂って――。
神崎が言っていた『噂』のこと?
「どんな?」
先生が真面目な声で先を促す。
ユカは、ううん、と言いずらそうに声を潜めて。
「前の学校で暴れて、同級生に怪我させたから、転校したんだって」
初耳だ。
「そういう噂があるから、みんな、その‥‥距離を取ってるっていうか」
ユカの視線がちらりとこちらに向けられる。
わたしも噂を聞いて千鶴から離れたのだと、そう思ってるんだろう。
「でも、ただの噂だし。本当――じゃないですよね?」
ユカが先生を見上げる。