女王様は上機嫌【GL】
夜。
蝉の鳴き声が聞こえる。
部屋の窓からお月様を見ながら、ユカと電話をするわたし。
〈今年の夏休みもお祖父ちゃんちに行くことになったよう〉
「そっかー。遊べないね」
〈奈々子も一緒に行こうよ~。ド田舎過ぎて面白いよ!〉
「ははっ、ムリだって」
もう間近に迫った夏休みに向けて、ユカの声は楽しそうに弾んでいる。
羨ましいなあ。
うちなんて毎年どこにも行かないよ。
つまらんっ。
にゃーお。
窓の外から猫の鳴き声がして、空から地上へ視線を移動させる。
「あっ」
〈どしたの?〉
「え。いや」
視線の先に猫はいなくて。
でも代わりに、道を歩く人影が目に映った。
――千鶴だ。
考えるより早く体が動いて、わたしは部屋を出た。
「ごめん、ちょっと切るね」
〈んー? りょーかーい〉
通話を切って、階段を降りる。