女王様は上機嫌【GL】
「コンビニに行ってくる」とお母さんに言って、家を飛び出した。
また平和が壊れちゃうよ。
また千鶴のワガママに振り回されちゃうんだから。
警戒する声が頭の中で響くけど、わたしは足を止められなかった。
「千鶴!」
街灯に照らされた背中を見て、叫んだ。
華奢な肩がビクリと震えて、千鶴の歩みが止まる。
わたしは、千鶴の手を掴んだ。
「――なんだよ」
千鶴は振り返りもせずに、ただ声だけがわたしに向けられて放たれる。
少しほっとした。
千鶴の声が久し振りに聞けたから。
千鶴の手はひんやりと冷たい。
この温度を感じるのも、久し振りだった。
その手を引っ張ると、やっと千鶴がこちらに目を向けた。
「どこ行くの? こんな時間に」
「遊びに行くんだよ」
「じゃあ、わたしと遊ぼうよ」
「は?」
千鶴の手がわたしの手を振り払おうとする。
でも、わたしはそれを許さない。
「放せよっ痛いっ」
「ごめん」
「謝るくらいなら放せっ」
「やだ」
千鶴を無理矢理引っ張って、近所の公園に向かう。
体力と体格の差が如実に表れて、はっきり言って楽勝だった。