女王様は上機嫌【GL】
千鶴は運動が苦手らしい。
それも、ものすごく。
「あー、また‥‥」
「ど、ドンマイだよ宝田さんっ」
うんざりしたため息。
千鶴への励ましの声。
そんなものが、何度かコートを行き来した。
千鶴のもとにボールがまわる度に、彼女はそれを取り落としていた。
なんとかパスを受け止めても、あさっての方向に放り投げる。
しかしそれでも、千鶴は表情を変えない。
涼しげな顔でプレイを続ける。
肝が座ってるなあ。
あれはある意味、尊敬にあたいするよね。
「おつかれー」
休憩に入って、話しかけると。
「‥‥爽やかに声をかけんな」
千鶴の表情は一変していた。
「こんな競技できなくたって、死ぬわけじゃない」
しかめっ面で、吐き出すように言う。
わたしは笑いそうになるのをこらえなきゃならなかった。