女王様は上機嫌【GL】
家に帰る前に、千鶴のアパートに行ってみた。
具合悪くて倒れてたらどうしよう、と思って。
ピンポーン。
インターホンを鳴らしてみても、反応なし。
コンコンコン。
ノックにも無反応。
シカトかどこかに行ってるんだったらいいんだ。
けど、もしも倒れてたら――。
そうして扉の前で立ち尽くしていると。
階段をのぼってきた中年の男に、
「うちに用ですか?」
と声をかけられた。
この人、もしかして。
「あの。千鶴‥‥さんのお見舞いに来たんですけど」
「千鶴に? お見舞い?」
「はい」
男は少し考えるような仕草をして、それから薄い笑みを浮かべる。
「――それは、どうもありがとう。けど、娘は今いませんよ」
あ、やっぱり。
千鶴のお父さんなんだ。