狼ゴコロは愛のイロ


「お前、今日は仕事のはずだろ?家から出て行くのが」


「見えましたか?それだけじゃないですよね。盗聴器で俺たちの会話も聞いてましたよね?」


「・・・・・・・・」


「まぁいい。あなたに辿り着くまでには時間がかかりました。逮捕されて出所した後、整形して名前まで変えていましたからね」




だから、名前を聞いても写真を見ても分からなかったんだ。


雅の背中からちょこっと顔を傾けて彼の顔を覗き見ると、目が合った。




「はっ!玖美!!」


「いやっ!!!!」


「玖美!」




のばされた手に、あたしは悲鳴を上げた。


彼から守るように、雅が抱きしめてくれた。




「玖美から離れろ!!彼女は僕のものだ!!」


「バカな妄想はやめてください。それに、彼女はものじゃない。あなたは彼女をものとしてしか見ていない!!」


「うるさい!!お前さえ現れなければ、彼女は永遠に僕のものだったんだ!!いつまでも永遠に、二人だけの世界で」


「あなたにその権利はない。あなたの愛は彼女を苦しめる事しかしない。彼女を幸せにできるのは俺だけだ」


「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!!彼女は僕のものだ!なぁそうだろう玖美!?僕を愛しているだろう?僕がいない間に結婚したことはこのさい許してあげよう。さぁ、僕のもとへ戻っておいで!!」




< 110 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop