狼ゴコロは愛のイロ


あらためて思う。


この人は狂ってる。


逮捕されて罪を償ったわけじゃない。


あの頃と何にも変わってない。



「あたしは、あなたなんて愛してないわ・・・」


「え?何を言ってるんだ玖美」


「あたしは、雅を愛しているの。雅はあたしを苦しめないわ。大切に、幸せにしてくれるの!」


「そんな・・・・・・。」




有り得ないとでも言う表情を見せる彼。




震える手を雅は、ずっと握っていてくれた。




「許さない・・・」


「え?」


「許さないよ、玖美・・・」



俯いていた彼が顔を上げる。



理性を失ったかのような血走った目。



そして手には




「み、雅!!」


「くっ!玖美、後ろへ!」


「お前なんか殺してやるー!!」




彼は隠し持っていた包丁を手にすると、雅へ突っ込んできた。




「そう簡単にはやられませんよ!」



ここは玄関。


一気に突っ込んできた彼をかわし雅は彼の腕を掴んで



「ぐっ!!」


「うあーー!!!?」




一本背負いを決めた。




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