狼ゴコロは愛のイロ


疑問を抱くあたしに、雅はちょっと考える顔をした。


「ん~・・・多分、練習したからじゃない?」


「え?」



あたしの脳内に、雅が女性とキスする映像が出てきた。



あたしは何度か男の人と付き合ったことがあってキスもしてきたけど、雅ぐらい優しくて甘くて安心するキスなかった。



それは、雅が何人もの女性と練習をしたからと?




「練習って・・・誰か他の人とってこと?」



嫉妬で涙が出てきそう。


お願い、否定して!


そういう思いで雅を見上げれば、彼は可笑しそうに笑った。




「違うよ。言ったはずだよ?俺のファーストキスは玖美だって。女性関係は今まで皆無だったから」


「じゃぁ練習相手って?」


「あぁ。それは、台所にあるはず」



台所に?



雅の後ろについていくと、「コレだよ」と雅は赤い実を手にしていた。



「さくらんぼ?」


「そう。さくらんぼの茎が練習相手」


「え?!嘘!」


「本当だよ。うち、老舗旅館でしょ?だから子どもの頃から教育には厳しかったんだけど、叔母の出す課題だけは大好きだったんだ」



雅の実家は高級老舗旅館。


政界の偉い人とかも来るようなところで、簡単に言うとお金持ち。


雅は次男だから跡継ぎとかは関係ないんだけどね。



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