狼ゴコロは愛のイロ
┠二人の始まり
「・・っん・・・ふ・・・・・っ・・・・・・」
ん?
何か泣いてる?
近くで女性の泣き声が聞こえてきた。
その日は、龍一に買い物を付き合えと呼ばれていて、待ち合わせ場所に行くために地下鉄に乗っていた。
満員電車はいつものことだが、やっぱり慣れない。
そんな不満を抱いているときに聞こえてきた声に、俺は後ろを振り返った。
すると、息を呑むほど美しい人が、涙をこぼしていた。
どうしたのか・・・
つい声をかけそうになったが、俺に声をかけられても怖いだけかと思い直し、前を向こうとした瞬間
彼女の後ろにいる男が目に入った。
まさか・・・・・・っ!
目線を下にづらせば、男とこの手が、彼女のお尻を掴んでいた。
触っているなんてもんじゃなかった。
コイツっ!!
俺は次の瞬間、彼女を自分の胸に引き寄せ、男の手を振り上げた。
「うわっ?!な、何すんだよ」
「ふざけるな。駅員に叩きつけてやるから覚悟しろ」
周りも騒然となる中、駅についたため、すぐに降りて駅員のところまで連れていった。
その間も、彼女はおとなしく俺についてきた。
――――――――・・・
「いやぁ、君みたいな勇敢な人間が多ければ痴漢に合う被害者もちょっとは救われるんだけどねぇ」
駅員も困ったように言って男を警察に連れていった。