狼ゴコロは愛のイロ
それからハッとなって彼女を見る。
「大丈夫?」
顔を見ると、大丈夫?と聞くのが間違っていたと思った。
「大丈夫なわけないか。ごめん・・・・・・」
大粒の涙をこぼしながら、彼女は震えていた。
ここだと人目につくなぁ。
「どこかお店に入ろうか。ここだと目立つから」
「は、い・・・・・」
初めて聞いた彼女の声は、小さく、弱々しいものだった。
「少しは、落ち着いた?」
それから少し歩いて地下街にある喫茶店に入った。
奥にある、あまり人の視界に入らない位置に着くと、彼女は少し落ち着いてきたようだった。
「はい・・・・・あの、ありがとうございました」
「いや、いいんだ」
話が続かない。
俺は、ただでさえ女性に免疫が無いんだ。
話なんて、年を重ねるにつれ、必要最低限のことしか話さなくなったし。
何、話したら良いんだ・・・?
「あの・・・・・・」
「はい?」
「今日は本当に感謝してます。あたし、痴漢よくされるんです。でも助けてくれたのは、あなたが初めてでした」
「よくされるって・・・電車に乗るたび?」
「大体・・・今日なんて、まだ良いほうなんです」