狼ゴコロは愛のイロ
「おはようございまーす!」
噂のマドンナがフロアに入ってくると、一斉に注目を浴びた。
「あ、一昨日は私達のために結婚式に出席していただいてありがとうございました。おかげで素敵な1日になりました」
ポッと頬を染めながら話す玖美に女性は落胆のため息。男性は少々恨みのこもった瞳で見つめた。
「(こんな美女がもったいない)おはよう、玖美。本当に素敵だったよ」
「(アンタは何で)あたしも見惚れちゃったよ」
「(あんな男が)昨日1日で疲れはとれた?」
(((好きなのよ!!!?)))
「皆、ありがとう。でもあの人が色々気遣ってくれたから、大丈夫よ」
同僚の疑問の念を跳ね返すような笑顔でお礼を言う玖美に皆肩を落とすのだった。
「皆、どうしたの?」
「ううん。玖美が幸せそうで何よりよ」
「あはっ。分かる?毎日一緒にいられるなんて嬉しくて仕方ないの」
(((俺もこんなこと言われてみてぇ)))
悲しき男の心の叫びこそ、玖美には微塵も届かないのだった。