狼ゴコロは愛のイロ
┠危険な手紙
車両を降りると、雅を探す。
人一倍背が高いから、あたしが彼を見つけるのは簡単。
彼は中々あたしをみつけられないんだけどね。
「雅!」
傍に行って手を握ると、ハッとこちらを見る。
「あ。また俺の負けだな」
「ふふ、あたしは人ごみに紛れちゃうからね」
朝のラッシュ時の地下鉄の込み具合は半端じゃないから、よっぽど目立つ格好をしないと難しいよね。
「それじゃぁ、家でな」
「うん。お仕事頑張ってね」
「玖美も」
その後、あたし達は駅を出て別れた。
「三上さん、おはようございます」
「おはようございます。佐藤さん」
いつもの清掃員の人に挨拶をして、エレベーターに乗り込む。
うわ、満員だ。
その時
ゾワッと寒気が走った。
全身に鳥肌が立つ。
「悪い、宗苑。俺だ」
「え、新村さん」
「手が挟まって動けないんだ・・・」
彼はあたしの先輩で、仕事を色々教えてくれた人でもある。
首を後ろに向けると、確かに壁とあたしのお尻に挟まれてる。