狼ゴコロは愛のイロ


「・・・あの、どうかしましたか?」



固まっている佐藤さんに尋ねると、ハッとした。



「すみません。私はてっきり旦那様の方が、あなたに惚れ込んでいるのかと・・・」


「そんなことありませんよ!きっと、あたしの方が彼のこと愛してると思います。それに彼は、あたしの中でヒーローですから!!」



他人に中々受け入れてもらえなくて、同僚にも「狼」だとか「熊」だとか酷く言われているみたいだけど、あたしの中での彼は白馬に乗った王子様。



痴漢に合っていたあたしを躊躇うことなく助けてくれた彼と初めて会ったときは、恐さなんてものより、安堵しか感じなかった。



それから彼を知るたびに、どんどん惹かれてハマっていった。



今でこそあんなにキスもできるけど、最初付き合った頃なんて手を繋ぐだけで彼は照れていた。



初キスなんてあたしの不意をついてチョコンとだけ。



それなのに、今ではキスも抱きしめるのもたくさんしてくれるようになって、あたしの方がタジタジ。



皆はあたしに、もっといい人がいたんじゃないかとか言うけど、あたしには彼以上に素敵な人はもう出会えないって思ってる。




「そうですか。それはいい人を見つけましたね。羨ましいです」


「佐藤さんも頑張ってくださいね!応援してますから!!」


「ハハ、頑張ります」



小さく頭を下げてあたしはその場を後にした。




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