狼ゴコロは愛のイロ
┠危機再来
写真が送られてきてから、数日たったころだった。
「玖美、思い出したくないだろうけど、あの写真のことだ」
雅が書類を手にしながら書斎から出てきた。
「・・・・・どうしたの?またなんか」
「いや、違うよ。写真の角度や距離から、向かいのアパートから撮られたと考えて調べてもらっていたんだ。その結果が来たんだよ」
「結果って・・・犯人がわかったの?」
そんなに簡単に見つかったの?
それじゃぁ、ただの悪戯だったの?
でも、雅は首を横に振った。
「犯人は分かったけど、もう逃げた後だったし、逃げた先も分からない」
「誰だったの?あたし達の知ってる人とかじゃないよね?」
「いや、知らない人だ。犯人は佐藤っていう男だった。この1ヶ月の間にアパートを借りて解約をしている人間はこの男一人だから間違いないと思う」
「佐藤・・・・・・・」
「・・・ん?心当たりがあるのか?」
頭に浮かんだのは、会社の清掃員の佐藤さん。
いや、でも・・・入社した時から知っている佐藤さんが、まさか・・・・
「玖美?」
「佐藤さんて男の人が、うちの会社にいるの。清掃員なんだけど」
「・・・・よく話すのか?」
「入社当時から毎朝挨拶したりちょこっと話をしたりするだけなんだけど。でも違うわよね?佐藤さんなんてたくさんいるもの」
雅を見上げれば、変わらず心配そうな眼をしてる。そして優しく抱きしめてくれた。